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Jの衝動書き日記

さらりーまんSEの日記でございます。

煽り記事の作り方

煽り記事はこうやって作るんだよという典型を見たのでちょっと紹介したい。『実はこんなに高い あなたの町の「本当」の放射線量 公式発表は「低く出る」よう細工をしていた | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]』をまずは見て欲しい。記事はなるほど、ショッキングな内容ではある。これだけ読むとふざけるな!という気分になるだろう。さて何が問題なのだろうか?

注意書きをあえて無視する

記事の内容は、日々政府が公表している放射線の量が、実際に測ってみたら実は低い!というものだ。
実際に測定値が高いカラクリは、測定場所の高さが違うからだそうである。政府が公表している数値は地表から数mから十数mのところで測定したものだそうだ。そして実際に測ったという場所は、地表から100cm、ようするに、地表付近である。だから実はこんなに高いんだよ!というのが記事の趣旨だ。
何故こんな高さで測定しているのか? 色々な人に取材しているようだが、まあ、政府が指導しているからだ、なんてことで記事は落ち着いている。
さて、実際に地表付近で測定した値の参考元としているのが『放射線・原子力教育関係者有志による全国環境放射線モニタリング』である。
ここにはこんな注意書きが書いてある。

文科省が公表している都道府県別環境放射能水準調査の結果と私たちの結果には差がありますが、両者のモニタリングは当初の目的がそれぞれ異なるため当然です。前者は、今回の事故とは無関係に以前から測定されており、その目的は主に、過去または現在の大陸における核実験の状況、影響を継続監視することにあります(1960年代から70年代にかけて、核実験の影響により関東地区の環境放射能量が現在の数百倍から数千倍程度高い時期がありました)。したがって、観測点は、周辺建物などの影響を受けないように概して地表から高く設定されています。継続的に広域のデータを取ることに大きな意味があり、また今回の件でも、福島からの飛来物質の時間変動を見るには最適です。後者は、第一項で前述した目的が出発点ですので、地表からの高さ1メートル程度、私たちの生活圏をひとつの目安とし、また、線量結果に影響を与える地表の様子にも気を配っています。目的の異なる数値を、そのまま比べないようにしましょう。

・・・・なんだ、取材するまでもなく、高いところで測定している趣旨が書いてあるではないか。これを載せれば十分なのに、わざわざ取材までしてわざと高い場所で測定しているという印象を与えているのだ。
取材を受けた人は、文科省のモニタリングの目的を知らないのではなかろうか。そこに付け込まれて印象操作に手を貸した形になっているように思える。

数値を恣意的に利用する

まあ、これも煽り記事の典型だろうか。
確かに、国際放射線防護委員会の定める一般公衆の年間被曝許容限度は1mSvだし、これを超えているという事実は間違ってはいない。
でも、1.5mSvが1年間に自然環境から1人が受ける放射線の日本平均、2.4mSvが1年間に自然環境から1人が受ける自然放射線の世界平均、6.9mSvが1回のCTスキャンの被爆量、0.2mSvが東京とニューヨーク間を航空機で1往復 (高度での宇宙線増加)と比較対象があればどうだろうか(値はWikipediaより)。まだ、そんなに大騒ぎする程の量ではないだろうと思う。
ちなみに、日本平均である1.5mSvは、0.17μSv/hである。世界平均である2.4mSvの場合は、0.27μSv/hだ。5mSvぐらいだと、大体0.5μSv/hなので、まあこれを越える時は少々高いかな、という印象だ。
まあ、どの値が安全というのを断言は出来ないが、少なくとも比較対象の値があれば印象は違うだろう。

伝えるべきことは?

もっとも、この記事を読んでよかったと思うこともある。
それは、まず、測定の位置に関することだ。てっきり地表付近の観測だと思っていたのが、空中だったとは知らなかった。それを知ることが出来たのは良かった。
また、地表付近の観測を行っているサイトの情報を得ることが出来たことだ。何だかんだ言っても、自分の付近の観測値というのは知りたいのでこれも良かった点だ(ただし、サイトのURL自体をこのサイトで紹介していたわけではない)。
この2点を正確に伝えればよいと思うのに、何故にわざわざ記事は迷走するのか。まあ、それが現代クオリティってことなのだろうかね。単純に情報を伝えるだけじゃお金にならないのだろうし。でも、今回の記事に関しては力を入れる箇所が間違っていると思う。

地表の測定値のニーズ

ただ、現状の政府発表値は、確かに身近な放射線の値を知りたいというニーズは満たしていない。これも確かだ。そのニーズに応える形で有志が全国環境放射線モニタリングという形で展開しているがこれも限界がある。
だったら、NHKでやればいいんじゃなかろうか?受信料払っているわけだし。そして、明日の天気を知りたいというニーズに応える形で天気予報を提供しているのだから、今日の放射線量というのを提供してもおかしくない。
受信料は税金じゃないし、NHK職員は別に国家公務員でもない。そして身近な放射線量を知りたいというニーズがあるわけだし、知る権利に応える形にもなる。風評被害を防ぐというのもいいけど、判断基準もあってもいいと思うのだけど。